さうんど おんりぃ2

目次
プロジェクト概要

映像のないゲーム『ForestWalking』の開発

サラウンドを利用し、音源の発音する定位や位置情報・音色・リズムなどを聞きわけて仮想の空間を体感する、新しいジャンルのゲーム。

『ForestWalking』イメージ

『ForestWalking』イメージ

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プロジェクトの活動概要

映像のないゲームの企画・開発を行い、ユーザーが繰り返し遊んでくれるような面白いと感じられるゲームを開発すること、開発を通して、プロジェクトの進行の仕方、ゲーム開発について学んでいくことをプロジェクト目標とした。 ゲームの評価は、ユーザーアンケートで「おもしろい」が7割以上「もう一度遊びたい」が8割以上をプロジェクトの成功条件とし、結果「おもしろい」が8割5分、「もう一度遊びたい」が10割と目標を上回る結果となりプロジェクトは成功に終った。

成果物
データ

メンバー

名前役割所属
菊地徹也PM株式会社インテム
橋山牧人学生メンバー環境情報学部4年
藤原育実学生メンバー環境情報学部4年

メンバーの声

さうんど おんりぃ2参加者の声

ソフトウェアの規模

  • 全ステップ数(空行・コメント含む):4594行
  • 有効ステップ数(空行・コメント以外):2913行
  • コメント行数:999行
  • コメント含有率:21.7%
  • ファイル数:64ファイル

工数・スケジュール

工数・全体スケジュール
(左)工数 (右)全体スケジュール
評価

評価委員からのコメント(中間発表会)

中間発表会の様子1中間発表会の様子2
  • 面白いと感じた人ともういちどやってみたい人の割合が多いのは何故?

    ・個々人がゲームを独立に開発するところ
    ・2つのゲームの良いところを組み合わせるところ
    ・2つのゲームを評価するところ
    が全体計画に含まれていない.進捗状況の%はどうやって求めたのか?
  • ゲームのアイデアを提案させていただきましたが,ゲームに限らずプロダクト型のソフトウェアは(ユーザー)市場の存在が重要です.この点について是非一度議論してみてください.音キムスゲーム,音感ゲームはボーイスカウト活動というマーケットがありますから利用しても良いですよ.
  • プロジェクトそのものは面白いと思うし,挑戦的とも思いますが,このプロジェクトの目的そのものがコラマネの目的に合致してないのでは? プロジェクトのゴールがあまりにも壮大すぎる.PMの役割が他と異なる(一般的ではない) 通常のソフトウェア開発の範疇を越えている.例えば,TTSを肉声にかえる,街中の音を集める,音を録音する,編集する,ミックスダウン,シナリオ作成→コンテ,これらだけでそれぞれ専門のエンジニアや職種が存在する.自己開発型の場合,コラマネにおいては「のおと」のようなケースの方が適しているのでは?
  • 実装技術を短期間でよく身に付けていてすばらしい! 前回のプロジェクトの反省点はどのように考慮しているのかが聞きたかった.
  • ゲーム開発の方法が解かり易く説明できていた.評価方法で明確でよい.進捗状況はよく理解できた.
  • ・映像の無いゲーム,というコンセプトは脳みそを刺激しますね.制約が発想力を最大に引き出すように思います.ラジオドラマのほうが時にテレビより,奥行きを感じるのと同じで実に魅力的なプロジェクトです.

    ・人間が,音を判断に使っている局面は多いと思います.そういった,局面場面から,有用なものもできてくるように思います.例えば,自動車安全運転の研究にも応用できそうです.

    ・ゲームの設定環境で,作りこみ方が違ってくるように思います.暗闇で戦うハリーポッターだったら,部屋の中を舞台にするのでしょう.暗闇の森のフロドでしたら,道を歩きながらの状況設定になりますね.鞍馬の牛若丸でしたら…どういう,場面を考えるのでしょうね,その場面によって,使う道具も技術も違ってくるように思います.そういった,道具と今回の研究対象技術の組み合わせなども考えていくと面白いですね.

    ・ ゲームのターゲットマーケット設定も気になります.こども? 大人? 学生? 日本人? 女性?…
  • 開発段階からユーザーの意見をとりいれる手法は評価できる.特に健常者,ハンディキャップのある人双方が楽しめるものを目標にしたことを評価したい.
  • 「ゲーム開発だから」ということで特別扱いはするべきではないと思います.ゲーム開発とシステム開発は方法論が異なるのは当然ですが,「異なる」のであって,システム開発には方法論があるがゲーム開発にはない,というわけではないはずです.ならばこのプロジェクトでは,ゲーム開発独自の方法論が追求されるべきであって,それが今回の発表姿勢からは見えてきませんでした.
  • (1)目的
    「ゲーム」とする必要性が見えない.「音だけの世界」という枠組みによって広く捉えるのが良策である.ラジオ放送番組の中にも音だけ(音声や音楽でなく)を主体としたものがあり,好評を得ていると聞いている.こうしたものを参考にして考えてみてはどうか.

    (2)α版とβ版
    通常のα版,β版は本プロジェクトとは異なる.ここでのα版は「音の変化によって運動特性を表現できるか確かめてみた」と理解した.通常は,社内利用,限定社外利用を言う.

    (3)開発体制に対する疑問
    ゲームの開発体制は文書の作成や強調活動の馴染まないのは容易に想像できる.一方で,職人的な能力が要求される.こういう点から言えば,本教育方法とは馴染まないプロジェクトである.「企業活動は多様なので,ゲーム用ソフトウェアの開発も経験する」と言うことであろうか? そうあればPMの役割は何か?
  • ・前回からの継続であるが,アプローチが異なる.前回は実現性というところに,大きな柱の一つがあったと思うが,今回はそれを踏まえて,いよいよ「面白いゲーム」の創造性,企画性に焦点がおけるようになったと思う.

    ・プロジェクト管理の内容も,前回との違いが大きいと認識し,この観点からも,非常に興味深く,成果に期待する.

評価委員からのコメント(最終発表会)

最終発表会の様子1最終発表会の様子2
  • とてもおもしろそうなゲームで是非やってみたいなと思いました.その意味ではたいへん成功したプロジェクトだと感じます.また業界からPMの方を迎えたのが成功の大きな要因となっていること興味深く感じました.進め方も一般のシステム開発と大きく異なる部分があり,新鮮であるとともに,同じプロジェクトマネジメントといっても,目的により適している方法は異なるという点,勉強になりました.
  • ゲーム開発手法とソフトウェア開発手法をMixされたとのことで感銘を受けました.ゲームも良い出来と感じました.良いプロジェクトだったと判断します.
  • ゲーム開発手法というのは,初めて聞いたが,XP的な開発だと理解している.ゲームのアイデアを練っていくプロセスもプロジェクトとしては,おもしろいのではないか.音だけで遊ぶゲームの可能性について,もっと広範囲に検討をしてもらいたい.
  • ・発表の仕方:PMが発表すべきでない(プロジェクトの目標とか,目的とか).PMはPMとしての行動について発表すべきである.

    ・開発手法は面白い思う.
    ・開発projectとしてはうまくいった.これはPMの指導力のおかげである.しかし,Teamで開発することが本来の目的であるので,これについては,失敗したというべきであろう.

    ・ゲームは面白い.5点満点で3点.順位3.
  • 企画を考えるときに誰をメインターゲットにしてどんな価値をターゲットに提供するのかという観点を明確にして考察するともっと良くなると思います.システム開発技術を学んだというより試行錯誤を通じて企画の考え方を学んだというのが今回のプロジェクトの成果だと思います.それも1つの経験として意味はあると思います.
  • 1.開発手法
    システム開発の手法VSゲーム開発の手法? 要件定義のプロセスやユーザがどう違うのか?

    2.映像のないゲームの市場は ??盲目の人 ??一般の人 ターゲットは?

    3.ゲームの要件定義とは”おもしろい”がキーワード?
  • ゲーム開発に必要なツールの作成など,開発環境整備がよくできたと思います.その意味で大成功です.クライアントの評価も高く,今後が期待できそうですね.
  • 本コラマネの中で,最も秀逸な「作品」であるとは感じたが,これはゲームプロジェクトでもあり他のプロジェクトと比較するには,若干無理がある.つまり,ビジネスシステムやそれに類するシステムは圧倒的に外部からの入力が多く,それに悩まされる.それに比べてゲームは,ほぼ一方的にシナリオが進むソフトであることから他プロジェクトとの相対評価が難しい.しかしながら,売れるか否かは別問題であるが発想は非常にユニークである.例えば,PS2の名作に「ぼくの夏休み」というシリーズがある.リアルな夏の音満載のゲームであり,ゲームよりも音を聞いて癒されるユーザも多い.特に視力障害の方をターゲットにしなくてもこのように音がユーザに訴えかけるケースもあり,更に発想を磨けば有力な商品となると感じている.
  • 【総合評価】
    さうんど2プロジェクトは,B評価(限定的であるが実際に使われた)と評価します.

    【詳細な気付き事項】
    (1)ゲーム開発手法とソフトウエア開発手法の融合を試みたプロジェクトであり,この点に関しては高く評価します.

    (2)「おもしろい」というユーザ主観による難しい評価項目をアンケートを利用して定量化したことは高く評価できます.

    (3) ミニゲームを作っても面白いものができなかった時に,何故か考え,プロジェクト外部にアイディアを求めたという活動はすばらしいと思います.

    (4) プロジェクトの難易度,この期間のスコープを考慮すれば,A評価としてもよいプロジェクトであったと思います.

    (5) 今回のような開発手法は,プロジェクトメンバの高いプロジェクトマネジメント能力(自己マネジメント+α)とスコープと比較しての高い技術が必要となります.また,小規模なプロジェクトであることも前提となります.いつでも同様な手法が応用可能だと思わないほうがよいと思います.
  • 音だけのミニゲーム4本(α版)から,β版1本(虫取り)の作成を行なった.ユーザによるレビュー(大岩研・盲学校)では前期より評価の高いものが開発できた.前期とちがい,模作したことがよかったのであろう.作り方のちがうゲームというものをコラマネにとりいれる位置づけをどうとらえるべきであろうか(運営側への質問か).わたし個人としては,ゲームに限ったことでなく,作り方はさまざまあってよいし,PMの技量と考える.したがって,プロジェクト・マネジメント・オフィス側の考え方と技量に依存しよう.そうした意味で,本コラマネ・プロジェクト全体にとって,よい実践事例となったのではなかろうか.
  • ・数値目標はたいへんよいことだと思います.測ることのできないものは,評価ができない.常に,定量化,数値把握を心がけてください.

    ・WBSがゲーム開発でも有効というのは大変興味ある事実です.勉強になりました.

    ・さらに学生さんらしい・・というより,若い大胆な発想でゲームのイノベーションを実現してくれるとうれしいですね.
  • たいへんユニークなプロジェクトの進め方をして成功したチームです.PMが,プロジェクトメンバーの自主性を尊重して,委任型のリーダーシップスタイルをとったことが成功要因と言えますが,それはスキルと意欲が高いプロジェクトメンバーに適していたことであって,ゲーム分野の開発手法がシステム開発手法より優れていることを意味していません.なぜなら,ゲーム開発分野ではプロデューサが全体を厳しく管理していて,必ずしも委任型のリーダーシップスタイルをとっていないからです.今回は,プロジェクトメンバーが2名共に本教育の経験が長く,しかもスキルもかなり高かったところに自主性を重視したリーダーシップスタイルがとられたため,プロジェクトメンバーがのびのびと開発できたように感じました.理想的なスタイルの例だと言えます.
  • 映像のないゲーム(音のみに依存したゲーム)という,チャレンジングなテーマだと思います.
  • 発表の中でデモをやっていただいたが,たいへん素晴らしいと認識しました.特に,発表の中でもあったが,「映像を用いないゲーム」を作る際にはまず,質の高い音を収集し,それらを使ってゲームを開発していくべきという結論に達したところに大きく感動しました.本当にそうだ,どうして(中間報告会)気づかなかったのだろう・・・.発表の質疑の最後にユーザ南雲氏から「虫取りゲーム」の森の音が「屋久島」で採取されたものとのお話があり,なるほどと頷くことができました.Α版で実際にハンディを有する方からの意見「足音が無い」他,貴重な意見を貰い,改善を行なったことは非常に有効だったと評価できます.プロジェクトの進め方も前回(PMBOK)との違い,メリットなども明らかになり,たいへん興味深いです.