試行実験の概要

主題

3、4名の大学学部学生がプロジェクトを結成し、「人に使ってもらえるソフトウェア」を半年間かけて開発します。 このプロジェクトに、企業の若手技術者(または大学院生)がプロジェクト・マネージャーとして参加し、学生と一緒に活動してもらいます。 プロジェクト・マネージャーの仕事は、未熟な学生をプロジェクトの成功に導く効果的なマネジメントを行なうことです。 学生のメンターとして、技術指導もしてもらいます。

上記プロジェクトの遂行によって、学生はソフトウェア開発の実践的知識とスキルを深めることができます。 プロマネとして参加している企業の若手技術者はプロジェクト・マネージメントの実践的知識とスキルを深めることができます。 つまり、このプロジェクトは技術者の教育とプロマネの教育を兼ねているということになります。

実施スキーム

コラボレイティブ・マネジメント型情報教育は下記のスキームで実施されます。 この教育はPBL(Project Based Learning)の形態をとり、学習の大半は学生と、社会人のPMが主体となって進行する「プロジェクト」によって行われます。 そして「コラボレイティブ・マネジメント・ラボラトリー」がプロジェクト間の連携などをサポートします。 他大学や企業人有識者で構成される「評価委員会」で、プロジェクトの評価が行われます。

図 実施スキーム
プロジェクト

プロジェクトは、学部1年から学部4年生(3、4名)と、社会人のPM(もしくは大学院生のPM)により構成されます。 ただし、社会人のPMは、会社での業務と並行して行うため、週に一度しか参加できないという制約があります。

  • プロジェクトの目標
    • どんなソフトウェアを作るかは学生の自由ですが、人に使ってもらえるソフトウェア(またはシステム)を作ることが条件です。 作り上げることが目的ではなく、必ずユーザが想定されている「使える」ソフトウェアでなければなりません。
  • コミュニケーション
    • プロジェクトにおけるコミュニケーション活動の基本は、プロジェクトの前メンバーの集まる週1回のミーティングです。 この週1回のミーティングの他にも、プロジェクトの進行に応じて、PMの参加しないミーティングを行う場合もあります。 また、メーリングリストを通した情報交換は、週1回に限らず、活発に行われます。

      ミーティング風景1ミーティング風景2
  • 個々の学習活動
    • この授業では、講義はありません。必要な知識は各自勉強する必要があります。 PMや先輩に習う、独学、あるいは勉強会に参加するなどさまざまな勉強の方法があります。
  • 教育的視点によるマネジメント
    • PMは週1回の来校による対面指導と、電子メールのやり取りによってプロジェクトマネジメントを行います。 採用する開発プロセス等は任意ですが、企業の論理を学生に押し付けることは許されていません。 一般的な企業のプロジェクトとは異なり、教育効果があったかどうかがプロジェクトの評価基準になるからです。 それゆえ、基礎能力もモチベーションも異なる学生たちそれぞれに適切な仕事を与え、 オーダーメイドのカリキュラムを作ることがPMの重要な役割といえます。
Collaborative Management Laboratory

コラボレイティブ・マネジメント・ラボラトリーは、個々のプロジェクトを横断的に監督、指導する組織であり、 運営母体である大岩研究室のメンバーはもとより、学生やPMなど、この授業にかかわる人間全てが参加する組織です。

  • 逐次報告会
    • 逐次報告会は毎週の授業時間に、各プロジェクトの進行具合や成果物等を他の授業参加者に報告します。 プロジェクト同士の相互レビューが行われる、プロジェクト間の交流の場になります。
  • 勉強会
    • 授業の前提知識ではないけれど、ほとんどプロジェクトの進行に必要な技術については、 大岩研究室のメンバーが先生となって勉強会を開き、教えます。 PMの麺ターとしての負担を減らすと共に、学生全体の技術力の底上げを行います。

      また、上記以外でも大岩研究室のメンバーが技術的な質問に答えたり、 環境の提供や成果物のレビューを行ったりなど、さまざまなサポートを行います。

プロジェクト・マネジメント・オフィス

  • PMミーティング
    • 授業時間の前に、PMと大岩研究会のメンバーによるPMミーティングを行います。 本プログラムにおいてはPM自身の学びも重視されるため、PMは試行錯誤をしながら、 ミーティングにおいて自身のプロジェクトマネジメントの状況にを報告し、 プロジェクトの進行やマネジメント法などについて議論や相互レビューを行います。
  • PM勉強会
    • 学生と同様にPMも、コーチングなどマネジメントに必要な知識の勉強会を行います。
成果発表会・評価委員会

本プログラムの成果とカリキュラムは他大学の教授や企業人有識者で構成される「評価委員会」で評価されます。

成果発表会

  • 数十名のIT産業界、学術会からの有識者の視線が集まる中で、学生はプロジェクトの中間報告、最終報告を行います。 質疑応答では評価委員らによる、さまざまな視点からの厳しい質問が飛び交います。

    最終報告会風景1最終報告会風景2

プロジェクト評価委員会・カリキュラム評価委員会

  • プロジェクト評価委員会では各プロジェクトの評価方法を議論し、実際の評価も行います。 カリキュラム評価委員会ではカリキュラム自体を外部の視点から評価し、プロジェクトの進行方法、 および教育手法の改善、プログラムの標準化の可能性を評価します。 評価委員会から得られたフィードバックをカリキュラムの改善に役立てています。

    カリキュラム評価会風景1カリキュラム評価会風景2

評価委員との交流会

中間・最終発表会の後には発表会に訪れた評価委員と学生の懇親会が設けられます。懇親会は立食パーティ形式で行われ、 IT産業界の方や学術会の方々とシステム開発やプロジェクト、今後のIT産業界についての会話が開場のあちこちで活発に交わされます。
交流会の様子1交流会の様子2 交流会の様子3交流会の様子4